会が催されたので出かけていき、鴨ちりを食べてうまかったという話をしようとしています。最初に会について少しだけ触れておきたい。みなさんにとってどうでもいい情報であることは承知しているのですが、私の「食べました記録」の多くがこの会から発生しており、今後ブログにも度々登場するであろうと思われるので、憚りながら書く次第です。
会は正式名を「付箋の会」といい、毎年4月に発売されるリーフ特大号の行きたいところに付箋を貼り、それを1年かけて消化するという、発足当時の目的に由来しています。開催は月に1回、主な活動内容は「おいしいものを食べる」「たまに寺社仏閣に行く」「ファッション映画か美術展を観る」の3つ。12月に、その年行った中で最もおいしかった店を再訪するアワード形式を採用しています。
メンバーは3人、家では必ず靴下を半分脱ぐ謎習慣をもつ「エヌ氏」と、最近気分をリセットするという名目でつけまつ毛をやめたものの、元々ラクダのようなまつ毛のため誰にも気づかれていない「アキ嬢」、そして私ことダダさんです。職種は違えど全員何かしらアパレル業界にかかわっている「いとへん民」。お金はあまりない。食欲はある。以上です。
で、このレポートは昨年末のこと、つまり2017年のアワード会にあたります。時期柄、温かいものが選ばれがちというシステム上の欠陥はあれど、それを差し引いても鴨ちりがうまいという話です。前置きが大変長くなりました。
桝富 @東山
三条あたりで集まってぶらぶらしたあと、今日の本丸こと「桝富」に向かいます。京阪の三条駅からなら歩いて20分ほどでしょうか。最寄りは地下鉄東西線、東山駅。1番出口から徒歩1分。三条通を東に進み、白川沿いを北に行くとすぐ、風情のある建物が見えます。
お隣に祇園の老舗和菓子店「祇園饅頭」の工場があり、販売もされていてお土産にちょうどよい具合です。朝の10時半ごろから夕方までの営業とのことで、桝富が開店する時間には売り切れつつあり、エヌ氏も栗餅を買い損ねてしょんぼりしていました。みなさんはお早めにどうぞ。
さて、17時になりましてお店に入ります。お座敷とテーブルがあり、本日はテーブル席。テーブルにはすでにお鍋と具材がセットされています。
白菜、水菜、菊菜、インゲンなどの野菜、しいたけ、しめじ、舞茸などのキノコ類、豆腐や糸こんにゃく、生麩に湯葉、山菜…種類豊富な具材がこんもり盛られています。火の通りにくいものから入れていき、グツグツするのを待つことしばし。
本日のメイン、鴨です。
お店の方によると、さっさっと湯にくぐらせて、色が変わったら食べごろとか。ほとんどしゃぶしゃぶですね。大根おろしと刻み葱をたっぷり入れたポン酢でいただきます。うーん、肉厚で柔らかくてめちゃくちゃうまい。そんでこのポン酢もうまい。
どんどん食べます。時折七味を入れると更なる食欲がわいてくる。そのまま食べ切りたいところですが、少しばかり我慢して鴨を残しておきましょう。具材をあらかた食べ終わったら次のお楽しみ、お蕎麦がやってきます。鍋をもりもり堪能していると忘れそうになりますが、そもそも桝富は蕎麦の名店なのでした。
蕎麦まちの間、鍋の出汁をへつりながら酒を飲みます。昆布と鴨、野菜の出汁が渾然一体となった液体は、旨味がこれでもかと凝縮されておそろしくうまい。いくらでも飲める。ポン酢を少し入れるともはや無敵です。すばらすばら。
お蕎麦はすでに茹でられており、少し出汁にくぐらせて、ポン酢でいただきます。ここで先ほど残しておいた鴨を投入。蕎麦と一緒に食べると口の中が天国と化します。うまいかよ鴨。うまいよ蕎麦。
もはやお腹がいっぱいなのですが、ここでシメのお茶漬けセットが登場。ご飯に漬物とわさびをのせ、出汁をかけ、ポン酢でお味を整えてさらさらとかきこみます。満腹なのに食べられてしまう。出汁、恐ろしい子…!
最後に季節の果物(この日は蜜柑でした、これがまた甘いやつ)と温かいお茶をいただいて完食しました。このクオリティで鴨ちりひとり3,500円。いいお店だなあ。鴨ちりは2人から、事前に予約が必要です。つるっとお電話しましょう。
席は2時間制、待っているかたがおられるのでささっと退出。ここで思い出していただきたいのですが、この時点でまだ7時過ぎです。お腹いっぱい&ほろ酔いで夜が始まったばかりという至福。ありがとう。世界にありがとう。最高です。
京都府京都市東山区三条白川橋西入大井手103
営業時間:11:30~15:00/17:00~21:00(L.O)
定休日:月・火曜日
2軒目にまいりましょう。ここから歩いて、あるいは地下鉄に乗って繁華街に出たっていいのですが、せっかくなのでまずは近くで一杯やりたい、となりますと素敵なバーがあります。本当に歩いてすぐ、しかも駅方向。
うえと salon&bar @東山
バーのよしあしについて、きちんと語れるレベルにない経験値なれど、ここが素敵なバーであるのは間違いがないのです。ミニマルで研ぎ澄まされていながらも柔らかなしつらい、おいしいワインとおつまみ、そして唯一無二のマスター。
捉えどころのない飄々とした雰囲気なのに、知らぬ間に巻き込まれて空間に馴染めてしまう絶妙な距離感は、お人柄というより才能といったほうがしっくりきます。難しいワインの名前を全く覚えられない我々にやや呆れるそぶりを見せつつ、丁寧に説明してくれ、楽しそうにお酒を出していただきました。マスターが楽しそうだとこちらも楽しい。お酒もうまい。
それにしても、トイレに行くと後ろから「頑張って!」「応援してる!」という謎エールが飛んでくるバーはここだけではないだろうか。14時から開いているので、明るいうちから飲めるのも嬉しいですね。
うえと salon&bar
http://ueto2011.com/
京都市東山区三条白川橋西入ル南側今小路町91-1
営業時間:日〜木曜日/14:00-22:00 金・土曜日/14:00-23:00
定休日:火曜日
のんびりとつまみながら数杯いただき、混んできたあたりで退散。9時過ぎです。
あんなにお腹いっぱいだったのに、なんだか小腹が空いてきました。生きていると腹が減ります。熱いコーヒーが飲みたい。あと甘いもの。
どこかカフェでもまいりましょうか、となりまして、酔い覚ましに四条まで歩いて行くことにしました。西に向かって地下鉄東山駅の出入り口を過ぎ、古川町商店街の中を突っ切ると、ちゃっちゃと知恩院前に出られます。
かつては「東の錦」と呼ばれたらしい古川町商店街、今は昭和の雰囲気を感じさせる、レトロさが魅力の街歩きスポットです。この時間にはほとんどのお店が閉まっていますが、クラフトビールのダイニングバーは賑わっていましたね。今度行ってみたい。
しゅるっと知恩院前に着き、そのまま祇園まで下り、四条通りに入ります。さてどこに行くか、なにせ酔っ払いというのは判断能力がにぶにぶの生き物ですから、全く適当な店が思い浮かびません。さっきからモンブラン食べたいしか言ってない。寒い。タルト食べたい。寒い。
さらさ花遊小路 @四条
で、結局入りましたのは「さらさ花遊小路」です。困った時のさらさ。ありがとうさらさ。
「さらさ」というのは京都を代表するカフェ群で、町屋改装の先駆け的存在。店舗ごとに異なる空間、自由で雑多な雰囲気が魅力です。現在は市内5店舗+焼き菓子店があるほか、「さらさ出身」のカフェオーナーが方々に発生して一大勢力を築いているわけです。同じような構造のものに「五十家コーポレーション」があるのですが、それはまた別の話。
ケーキとアルコールをオーダーしました。あれほどコーヒーを飲みたいと言っていたくせにメニューに存在すると酒を選んでしまうあたりに我々の限界があります。ケーキは系列の「さらさ御供焼き菓子工房」のもの。ナッツがぎっしり乗ったタルトをいただきました。素朴でうまい。生産性のない話でゲラゲラ笑いながら、賑やかなカフェで夜が更けていきました。
さらさ花遊小路
http://www.cafe-sarasa.com/shop_kayuukouji/
京都市中京区新京極四条上がる中之町565‐13
営業時間:12:00〜23:30
定休日:毎月最終水曜日
今年はどんなアワードになるでしょう。楽しみですね。今日もいちにち、ごちそうさまでした。