リュックを買いました。大人になってからは初めてのリュックです。
前からぼんやりと「ひとつあってもいいんでないの?」とは思っていたのですが、どうにもスポーティーなものは不得意分野で、手持ちの服と合わせるのが難しいだの、ストラップが擦れるのが嫌だの、あれこれと理由をつけてぼんやりのままにしておりましてね。
それがなぜ「欲しい」に昇格したかといえば、昨年あたりからフードフェスに行きだしたせいです。とにかく両手を空けたい。快適に飲み物と食べ物を持ちたい。そうだリュック…リュックがあれば…というわけで、リサーチを始めたのが昨年秋のこと。
カジュアル値を下げるべく、素材はレザー、色は黒と決めました。あと、シャープさがほしいのでトップに丸みがない形で、できればエレガントな装いに合わせても違和感のないもの。
基本的にリュックは装飾が多く、かといって何もないとのっぺりした印象だったりして、なかなかこれというやつが見つからない。元々カジュアルなアイテムに無理を言っているわけなので、当たり前なんですけども。
しかし、探せば出会いはあるものです。ある日の画像検索中、ハッとするような1枚が目に飛び込んでまいりまして、その瞬間にもう決まったようなものでした。それがこちらです。
Aeta RUCKSACK M
AetaのRUCKSACK。サイズはM。
Aetaは日本のバッグブランド。一期一会を大切に、丁寧なものづくりをすることがポリシーで、ブランド名は「逢えた」に由来するそうです。
すでに数ヶ月使っているので、ちょっとくったりしてきました。「鞄」というよりは「袋」って感じがするくらいミニマルですが、削ぎ落とされたデザイン特有の静かな圧があります。
パッと見えるところには、いわゆる「付属」と呼ばれるパーツ、何かの金具やファスナー、その引き手なども一切ありません。ステッチもほとんど見えない。それでいて、単にシンプルというだけではなく、色々と引いた後にデザインがきちんと立っている。力まず、ちょっとモードっぽく、エレガントさもある過不足のない佇まい。いいですね。好きです。
素材はバングラデシュ産のキップレザー。キップというのは生後半年から2年くらいまでの牛からできる革のことで、それより若いものはカーフとよばれています。でもこれ、ヨーロッパにおいては明確な分別がなくて、どうやら全部カーフらしいんですよね。以前、仕事でやりとりしていたイタリアの仕入先から届いた資料がゆるゆるで、カーフなんだかキップなんだかわからず「どっち?」と聞いたところ、「とにかくヤングな牛だよ!」との返答だったことを思い出しました。ヤングな牛。
軽いです。500gをちょっと超えるくらい。金具がないとはいえ、オールレザーとは思えない軽さです。レザーのつやは控えめで、しなやかでありつつも、ぱりっとした手触り。革が薄いので、荷物をぎゅうぎゅうに詰めたり、角のあるものを入れると、表にひびいてスマートさが失われます。購入したショップの画像では大きく感じてMにしましたが、容量が欲しい人はLがいいかも。
裏地はコットン。薄い生地なので、ちょっと入れにくいですが、深めのポケットが大小合わせて3つあります。
底の様子。本体と異なり、厚みと硬度のある革が使用されていて、形がキープされています。唯一、表にステッチが出ていたり、黒く着色されていない裁断面が見えたりと、表情のある部分です。
個人的にもっともポイントが高いのはストラップの処理。
内縫いなのでコバが見えないんですよね。コバというのはレザーの断面のところで、多くの場合は磨いたり、処理剤を塗ったりして仕上げてあります。丁寧なコバ処理はよいものなんですけど、どうしても割れたり剥がれたりして、使い込んだ感が出やすい。その点、内縫いは丈夫です。シームも裏側、きちんとプレスされて、上品な雰囲気の仕上がり。よき。
唯一の懸念は口が閉まらないということだったんですけど、ストラップをかけると自然と中心が閉じるので許容範囲かなと。トートのように手持ちで、あるいは片方の肩掛けでワンショルダーっぽくも使える仕様で、普段はそのように持っておりまして、背中に開口部がある不安をあまり感じないせいかもしれません。
後ろに控えめなロゴの型押し。
金具の色を気にしたりする面倒もなく、パッと持って行けるのがありがたい。同じように金具のない黒いレザーの靴を合わせると、全体がマットな雰囲気になってよろしいです。お逢いできて、とてもうれしい。