京都に住んでいると、「おすすめのお土産を教えてくれ」と言われることがございましてね。
観光で食べている都市の住人としては、なんとかこの要請に応えて素敵なお土産をお持ち帰りいただきたい。あわよくば税収も増やしたい。ってなことで、まずは満月の「阿闍梨餅」、マールブランシュの「茶の菓」あたりの全方位に外さない感じから入りまして、有名どころをいくつか列挙してみるものの、しばしば「それは知ってる」「そうじゃなくて」などという反応を頂戴します。
「そうじゃない」とは。
つまるところ、冒頭の質問は「ガイド本には載っていない、地元人しか知らない、おすすめのお土産を教えてくれ」という意味だと思われます。そうかそうか。なるほどなるほど。
そんなものは知らん。
なにせ京都に住んでいるとはいっても、私のような一般庶民はただ、ぼんやりと日々を暮らしているだけです。京都ガイドの類は氾濫して常に戦国時代、新しいお店もすぐに反映され、観光で来られた方のほうが詳しいなんてことはざら。修学旅行生が持っている手提げ袋で、お土産トレンドを遅まきに感じ取っているようなありさまです。
いや、もしかしたら知っているのかもしれない。地元の店、例えばパン屋とか雑貨屋とか、普段行っているところにも素晴らしいお土産が埋もれているのかもしれない。でも「普通のパン」や「普通の雑貨」であって、「京都で買った」以外には特に京都バリューがないように感じるんですよね。はたしてそれは、「京都のお土産」と言っていいもんなんだろうか?
さて、お客さんが来られまして、土産店に同行しますと「これおいしいの?」「どれがおいしいの?」と聞かれます。
それも知らん。
そもそも、土産店に並んでいるザ・お土産をあんまり食べたことがない。西利や大安で漬物を買わないし、八ッ橋を手土産にしないし、緑茶のよしあしも今ひとつわからない。「有名どころなら、そんなに外しはしないと思いますよ…」と曖昧に答えたりなんかして、どうにも役立ってないこの感じ。
京都のお土産多すぎ問題
とにかく多いんだ、「お土産」が。
掃いて捨てるほどあるのでガイドが必要なんですけど、肝心の京都人はこんな体たらくです。まあ、たかがお土産、そんなにこだわらなくてもいいやんと思う。しかしながら、されどお土産、インターネットに山ほど情報があるにもかかわらず、せっかく直接聞いてもらっているのに、これでは何だか不甲斐ないなあとも思うわけです。というか多分、インターネットにも情報がありすぎるんだよな。
せっかくの旅行、せっかくのお土産。どうせなら地元人として、お土産チョイスの一助となるような情報をすすっと差し出したい。そして、あわよくば税収を(以下略
もちろん、誰のためのお土産か、予算は、目的は、そんな諸々の条件によって最適解は異なるので、「いいお土産はこれです」なんて言い切れるはずもないんですけど、もう少し体験をともなった情報を蓄積してみてもいいんじゃない?という話です。お土産の主力は食べ物なので、実食ということですね。
お土産を分類する
お土産を食べるにあたって、ちょっと頭を整理します。
1. お土産のためのお土産
あらかじめ観光客をターゲットにお土産として開発されたもの(例:京ばうむ)、あるいは地元では食べたり買ったりあまりしないが、お土産としては人気があるもの(例:生八ッ橋)。京都人の間では手土産に使わないものの、他府県の方へのお土産として持っていくことはある。
2. 地元の手土産兼お土産
お土産としても人気があり、京都人の間でも手土産に使うもの。老舗の和菓子、あるいは「関西では京都にしか店がない」系オシャンティショップなど。ここ数年はチョコレートが強くないですかね、強いよね。
3. 地元人が普段使い
京都にある普通の店。ゆるゆるの普段使いから、やや奮発する店まで含む。地元人向けの情報誌などに載っている。たまに本当に地元の人間しか知らない店もある。
例外はあるし、境界線も曖昧ですが、大まかにはこんな具合かなと。下に行くほど「京都バリュー」が小さくなるかわりに「玄人度」が上がります。京都で買った「普通のもの」は3ですね。京都っぽさは薄いけど、ツウっぽいお土産ということになりましょうか。
で、3は黙ってても食べているのでいいとして、1と2ですね。1はとにかく、意識しないと食べる機会がない。食べましょう。2はちょいちょい食べてますけど、以外とド定番みたいなのを食べたことがなかったりします。食べましょう。
結局、なんやかんや理由をつけて食べたいだけな気もしますね。そうですね。まあ、いいんじゃないでしょうか。お土産を掘りついでに地元のあれこれを再発見し、それがうっかり誰かの役に立てば、これ幸いというやつかなと。今日はそんなところです。